第99回 平成15年5月27日
(第207回 細胞工学研究会講演会)
演題 日本の酒、中国の酒、世界の酒あれこれ
佐々木毅(前愛媛大学農学部)
 日本酒は古くから中国酒を、お手本としながら、独自の発展をしてきたことは、大筋において間違いないことだと思います。これは両国民が米を主食としているため、まず第一に米を原料とする酒が存在することです。ただし長い両国の歴史の中で、中国酒と日本酒は独特な発展を遂げてきました。米の原料処理の違い、用いてきたカビの差、似ているものの微妙に異なる製造方法などがあります。
 15世紀の後半に書かれた「多聞院日記」にはほぼ現在の酒造法が確立が報告されました。
もろみ仕込みが初期は二段仕込みからのちには現代と同様の三段仕込みと、酒の火落ち(腐敗)を防ぐために、「酒を煮る」として、夏酒には火入れをしました。
 これはパスツール温殺菌より約300年も前に実施されたことです。明治になって日本に招聘されたお雇い教師はそれを知らなかったのですが、日本では殺菌操作として、火入れ操作および複式並行発酵法が行われていることを世界に紹介しました。
 しかし、以前から中国の酒書、「北山酒経」には米を原料とした中国酒、紹興酒には煮酒として世界で初めての火入れが紹介されています。この書は南宋ができた頃に(1127)出版されました(著者朱肱)。火入れは日本が最初にやったと誤解されて伝えられました。
 同じ米を原料としても、中国酒と日本酒は、外観から見ても全く異なる様相を示しますが、これを称して各々を「時之技、人之技」と言います。原料処理をしなくても3年たったら飲めるようになると言った立場で酒造りに励む国と、毎年試行錯誤的に旨い酒を造るにはどうしたら良いかを追求したきた国の差でしょう。
 米あるいは雑穀から造る焼酎もまた、両国の製造法の差は歴然としています。中国の国酒と言われる芽台酒(まおたいしゅ)は、世界でも珍しい個体発酵で醸造される酒として有名でありこの模様を紹介します。日本の焼酎、また世界の酒については、1516年に制定されたビール純粋令(原料が麦芽、ホップに限定)を未だに遵守しているドイツビールと上面発酵ビール、スコットランドのピュアーモルトウイスキーを取り上げて説明します。
 最後に、以上と関連した、筆者が行っている研究を紹介します。(要旨抜粋)
 
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