第87回 平成14年7月26日
(第195回 細胞工学研究会講演会)
演題 高等植物ソース・シンク器官の炭素代謝のメタボリックエンジニアリング
重岡 成(近畿大学農学部)
 高等植物は大きくソース器官とシンク器官からなる。植物の生長はシンクおよびソース機能をもつ器官と物質転流を行う器官の共存、さらにはこれらの機能のバランスによって成り立っている。植物のソース機能の中心となるオルガネラは葉緑体であり、光エネルギーの生物エネルギー(ATP, NADPH)への転換とカルビンサイクルによるCO2の還元・同化すなわち光合成を行っている。本セミナーでは、まず高等植物およびラン藻のカルビンサイクルの調節系を概説する。最近我々は、ラン藻由来のフルクトース-1,6-/セドヘプツロース-1,7-ビスホスファターゼ(FBP/SBPase)遺伝子を高等植物(タバコ)に導入することで、野生株より光合成能(CO2固定)を増強し、最終的に成育を向上させることに成功した。これらの結果およびシンク・ソース器官の炭素代謝に関わる酵素遺伝子の導入による植物の生産性(光合成、最終産物への炭素分配など)に及ぼす影響に関する報告を紹介し、植物の生産性機能改良研究の現状と今後について考察する。(演者記)
 
←戻る


©島根大学 総合科学研究支援センター 遺伝子機能解析部門 shimane-u.org