第268回 遺伝子機能解析部門セミナー
(第392回 細胞工学研究会講演会)
演題 ゲノムに隠されていた生物の多様性を生み出す新たな機構
間世田 英明 氏(産業技術総合研究所)


 35億年前、地球上に生物が誕生して以来、過酷とも思える様々な環境に適応(ゲノムの変化なし)と進化(ゲノムの変化あり)を続け、新たな種の誕生といった途方も無く長い道のりを歩み続けている。現在、我々が眼にする多様な地球生態系はそんな生物の営みが作り上げた一つの作品である。その過程において、ゲノム上では、点変異といった比較的小さな変化と、遺伝子の水平伝搬に見られるようなドラスティックな大きな変化を伴いながら、ゲノム自体もまた多様化してきた。その多様性の過程では偶発的に遺伝子が生み出されるだけではなく、環境の変化にレスポンスしてあたかも意図的に遺伝子が生み出されるような、そんな機構もゲノムには存在していたかもしれない。発表者である間世田らは、その機構の一つであるかもしれない自ら遺伝子を作り出す機構(自己ゲノム編集機構)を感染症の原因菌である緑膿菌が抗生物質に暴露された際に発動することによって、耐性遺伝子をゲノムの特定の場所に生み出す機構を見出した。この機構はどうも人を含めた全ての生物で共通して有している機構であることをこのほど明らかにし、さらには生物の多様性や個性の発現にも関与する可能性が示唆されてきている。今回は、そんな機構の一つを紹介し、生物の合目的多様性発現機構の可能性を討議したい。

 
←戻る


©島根大学 総合科学研究支援センター 遺伝子機能解析部門 shimane-u.org