第266回 遺伝子機能解析部門セミナー
(第390回 細胞工学研究会講演会)
演題 野生イネのゲノム解析から見えてくる野生種から栽培種への進化
佐藤 豊 氏(情報・システム研究機構 国立遺伝学研究所 植物遺伝研究室)


 作物の野生祖先種は、耐病性やストレス耐性を付与する作物育種に必要な新たな対立遺伝子プールとしての役割が期待されており、貴重な遺伝資源である。国立遺伝学研究所では、1950年代から世界各国の野生イネ自生地から採取された野生イネ遺伝資源の保存と配布事業を続けている。栽培系統を保存する遺伝資源センターは世界中に数多く存在するが、野生イネ遺伝資源を体系的に収集保存している機関は世界的に見ても、IRRIと国立遺伝学研究所以外にはほとんどない。
 私たちのグループは、文部科学省ナショナルバイオリソースプロジェクトのサポートにより、野生イネ遺伝資源の保存と配布事業をおこなっている。また、保有する野生イネ遺伝資源のゲノム解読やさまざまな形質情報の取得と公開も進めている。これにより、多くの研究者が野生イネ遺伝資源に興味を持ち遺伝資源が有効利用されることを期待している。
 本発表では、国立遺伝学研究所が保有する野生イネ遺伝資源の特徴とともに約1万年のイネ栽培化プロセスに関する幾つかの説を最近のゲノム解析結果を交えて紹介する。また、最近私たちの研究グループで取り組んでいる作物野生祖先種を利用するための新たな方策に関しても紹介する。

 
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