第265回 遺伝子機能解析部門セミナー
(第389回 細胞工学研究会講演会)
演題 イネをモデルにした単子葉植物胚のパターニング
佐藤 豊 氏(情報・システム研究機構 国立遺伝学研究所 植物遺伝研究室)


 細胞、組織、器官、個体レベルで観察される非対称性の確立と維持は多細胞生物発生の基盤をなす過程である。シロイヌナズナのような双子葉植物の胚は2枚の子葉を、茎頂分裂組織を挟んで対称に配置するが、イネのような単子葉植物の胚は、1枚の子葉とその向軸側に茎頂分裂組織を形成する。単子葉植物は2枚の子葉をもつ双子葉植物を起源とすることが知られていることから、1枚の子葉に変化する過程で非対称性が生み出されている。単子葉植物の胚に固有に見られる非対称性の確立と維持は、単子葉植物進化のもっとも根本的な過程だが、その分子基盤は明らかにされていない。
 私たちの研究室では、イネの体軸形成に関わる分子基盤をさまざまな胚形成突然変異系統を用いた解析をしている。この過程で、イネ胚における茎頂分裂組織が形成される側を腹側、子葉に該当する胚盤が形成される側を背側とした時に定義される単子葉植物に特有な背腹軸に異常をきたす突然変異体を発見した。この変異系統を用いて、イネをモデルとした単子葉植物に特有の体制の分子基盤の解明に取り組んだ。このセミナーでは、イネをモデルとした単子葉植物胚のパターニングに関する最近の研究結果を紹介する。

 
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