第258回 遺伝子機能解析部門セミナー
(第381回 細胞工学研究会講演会)
演題 12α水酸化一次胆汁酸による消化管バリア機能の脆弱化
石塚 敏 氏(北海道大学大学院農学研究院)


 摂取エネルギー量が過多になる条件では12α水酸化胆汁酸の分泌が選択的に増加する。肝臓で合成される12α水酸化胆汁酸であるコール酸(CA)を飼料に添加することでこの状態を模倣すると、肝臓での脂質蓄積や腸内細菌叢の変化が観察されることに加え、消化管の透過性が増大することを見出した。当初は、消化管内での二次胆汁酸の増大に起因するものと考えられたため、抗生物質を用いて二次胆汁酸生成に関わるグラム陽性細菌の増殖を選択的に抑える実験を実施した。その結果、消化管内での二次胆汁酸生成はほぼ完全に消失したものの、CA摂取による消化管透過性の亢進は抑制されなかった。胆汁酸組成分析による腸肝循環で主要な胆汁酸は一次胆汁酸であるタウロコール酸(TCA)であることが示され、in vivoでの消化管透過性と門脈血漿中でのTCA濃度の間に有意な相関が見出された。また、摘出腸管を用いたex vivoの透過性評価では、TCAが小腸下部組織において特異的に透過性を亢進することを見出した。消化管での物質透過性に関わるタイトジャンクションなどの発現解析では、大腸部位より小腸下部で多くの変動が観察された。これらのことは一次胆汁酸としての12α水酸化胆汁酸が主に小腸において透過性を亢進し得ることを示唆している。

 
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