第209回 遺伝子機能解析部門セミナー
(第328回 細胞工学研究会講演会)
演題 微細藻類の産業利用に向けて
~網羅的代謝解析と有用物質生産~
伊藤 卓朗 氏(慶應義塾大学先端生命科学研究所)
 全ての生物において、主要元素の摂取バランスは生育と密接に関係する。光合成生物は、光エネルギーを利用して炭素化合物を合成できるが、一方で、他の元素が欠乏した際には半自立的な光合成により余剰となる炭素化合物や化学エネルギーを処理するために代謝のみならず細胞レベルで大規模に応答する。その際に中性脂質を蓄積するオイル産生藻類は、持続的利用可能な石油代替燃料原として期待されており、世界各地で研究・開発が進められている。
 演者らは、日本各地よりオイル産生藻類の収集を行う過程で、緑藻のモデルであるクラミドモナスの日本新産培養株を確立した。これまでのクラミドモナス研究の多くは1945年に米国で単離された株を用いており、本株を交雑可能な新しい遺伝資源としての提供している。クラミドモナスも増殖に優れ、窒素栄養欠乏下で中性脂質を蓄積する。そこで、光同調可能なタービドスタット培養系を構築し、細胞形態の時間変化を解析した。また、メタボローム(大規模代謝物質)解析を中心とする定量解析や安定同位体を用いた標識代謝物質追跡によりオイル蓄積時の網羅的代謝解析を進めている。これまでの成果について失敗談を交えて紹介したい。また、微細藻類の燃料以外への産業利用として、廃水処理と飼料のタンパク源としての利用についても議論したい。
(演者記)
 
←戻る


©島根大学 総合科学研究支援センター 遺伝子機能解析部門 shimane-u.org