第166回 平成21年7月29日
(第278回 細胞工学研究会講演会)
演題 高等植物におけるペルオキシソームの機能分化とその制御
林  誠(基礎生物学研究所)
 ペルオキシソームは、真核細胞に普遍的に存在する一重膜オルガネラである。高等植物のペルオキシソームは、生理機能の違いから脂質分解に関わるグリオキシソーム、光呼吸を担う緑葉ペルオキシソーム、特殊化していないペルオキシソームなどに細分される。高等植物のペルオキシソームは、細胞分化や環境シグナルに呼応して機能が可逆的に変換するという他の生物には見られない際立った特徴を持っている。たとえば、脂肪性種子植物の子葉が緑化する過程ではグリオキシソームから緑葉ペルオキシソームへ、また逆に緑化子葉が老化していく過程では、緑葉ペルオキシソームがグリオキシソームへと可逆的に機能変換する。
 我々は、高等植物における制御機能の解明をめざして、ペルオキシソームの機能や形態に異常が生じた変異体を単離する方法を確立した。こうして得られた変異体は、(1)ペルオキシソームタンパク質の細胞内輸送を欠損するもの、(2)ペルオキシソームの形態に異常が見られるもの、(3)特定のペルオキシソームタンパク質を欠損するもの、に分類できる。これらの変異体の解析から、ペルオキシソームの機能制御に関与するペルオキシソームタンパク質の輸送機構やペルオキシソームの形成機構や他のオルガネラとのコミュニケーションなどが明らかになりつつある。本セミナーでは、高等植物におけるペルオキシソームの機能制御機構について考察する。(演者記)
 
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