第155回 平成19年11月20日
(第265回 細胞工学研究会講演会)
演題 腎臓病を誘発するkd変異マウスおよび線虫の寿命とユビキノンとの因果関係
西岐良一(カリフォルニア大学ロサンジェルス校)
 Ubiquinone (CoQ) は主にミトコンドリアに局在する電子伝達系の必須因子であり、また疎水性の抗酸化剤としても機能するイソプレノイド化合物である。UQ合成系遺伝子に変異を持つ患者はUQ合成能及び組織中のUQ含有量の低下、脳障害等の神経系疾患、腎炎等の症状を示す。本研究ではUQのイソプレノイド鎖を合成する酵素PDSS2にV117M置換変異を持つkdマウスを用い臓器中のUQ含有量の測定及び変異型PDSS2の機能解析を行った。このkdマウスは生後約60日を境に尿細管の拡張及び腎炎を示し、約200日ほどで死に至る。kdマウスの腎臓及び肝臓におけるUQ含有量は約70〜110日を境に有意に低下しており、腎疾患の発現時期とほぼ一致していた。また大腸菌発現系を用いてPDSS2野生型及びPDSS2−kd変異体型のUQ9合成量を比較したところ、kd変異体を発現した大腸菌においてUQ9量が有意に低下していた。これらの結果から、PDSS2遺伝子上のkd変異によるUQ合成量の低下が腎疾患の原因であることが示された。(演者記)
 
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