第142回 平成18年3月11日
(第250回 細胞工学研究会講演会)
演題 日本・中国・微生物 −春を迎える微生物−
松田英幸(島根大学生物資源科学部)
 微生物はあらゆる環境に適応し増殖する優れた能力を持っている。眼に見えないほど小さいが、あたかも高性能のコンピューターを搭載しているかのごとく周囲の環境を正確に認識する。さまざまな有用成分を生産、あるいは分解し、移動することも出来る。更に驚くべきことに眠れる遺伝子を目覚めさせ、新たな遺伝子を取り込んだり、外部に放出したりする能力も持つ。
 私はこの微生物の多様な能力を横糸に、遺伝子を目覚めさせる機能を縦糸に、微生物の機能の解析と応用を目指して、多くの人達と研究を進めてきた。
 具体的にいくつか挙げると、微生物によるカニ殻キチン質の有用なキトサンへの発酵変換、化学農薬に替わる安全な「バイオ農薬」の生産、海藻フコイダンの抗菌活性と抗腫瘍活性、また酵母グルカンの高純度精製法の確立、更に清酒酵母を機能強化した島根大學酵母の育種などがある。
 これらの微生物機能を高度に活用して、中国五千年の伝統発酵食品や生薬に存在する多数の有効成分の機能解析を、数年前から日中の共同研究で進めている。幸運にも成果が挙がり新規有用成分の開発につながれば、多くの人々の健康と長寿に貢献出来るのではと夢見ている。(演者記)
 
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