第402回 令和6年7月24日(水)
(第275回 遺伝子機能解析部門セミナー)
 
演題  未発掘地域資源を活用した地域産業創出・地域活性化 -ナシポリフェノールとローカル酵母を例として-
児玉基一朗 氏(鳥取大学農学部)
 
 持続可能な地域社会の確立のため、各地においてイノベーション創出による地域活性化が求められている。それぞれの地域・地方に特徴的な地域食材は、地域振興の切り札として多くの自治体で活用が試みられている。われわれは、他との差別化、独自性担保のため、“地域の隠れた資源=未発掘地域資源”の活用による地域産業創出・地域活性化に取り組んで来た。その実例として、下記2点に関して紹介したい。
1.ナシポリフェノール〔有名特産品に異なる視点から光を当てる〕
2.ローカル発酵微生物(ローカル酵母)〔未知の地域生息微生物に光を当てる〕

1に関しては、鳥取県を代表する地域資源であるニホンナシ‘二十世紀’の果実ではなく葉に注目して、葉に大量に含まれる機能性ポリフェノール(ナシポリフェノール)を活用した“梨葉茶”を製品化した。
2に関しては、全国各地における既存の発酵製品に関する取り組みとの明確な差別化のため、特に①ストーリー性と、②新規性・希少価値(オンリーワン)の2点をキーワードとした。その結果、二十世紀花からの梨酵母、花見の名所のソメイヨシノに由来する桜酵母、さらに、ヒノキ酵母、オリーブ酵母、バラ酵母、伯州綿酵母など、興味深い地域素材由来のローカル酵母を発掘・収集し、各地のブルワリー、蔵元、ベーカリーとクラフトビール、日本酒およびパン等を共同開発して、市販化に至った。特に、一般的に醸造に用いられるサッカロマイセス酵母とは別種であるラカンセア酵母〔非従来型酵母(NCY)〕を見出し、県内外のメーカーとコラボして、日本初のサワービールや日本酒、パン等の製造・販売を開始した。
これらの取組を通して、地域活性化に繋がるローカルリソースを活用したユニークな製品開発が進展した。

←戻る

©島根大学 総合科学研究支援センター 遺伝子機能解析部門 shimane-u.org