第399回 令和6年1月11日(木)

演題 ニトリル代謝に関わる微生物と酵素の基礎および応用研究
小林 達彦 氏(筑波大学生命環境系)
 
 我々は、培養条件の検討を含むオールドバイオ的アプローチをメインに意識しながら、近年は、生理活性物質の代謝を中心に研究を進めていますが、本講演では、炭素-窒素(C-N)三重結合のシアノ基を有するニトリル化合物の微生物分解に関して、お話したいと思います。
 ニトリルは、化学工業の出発物資や中間体など幅広い用途で使用されている化合物ですが、一方で、自然界には色々なタイプのニトリル化合物が存在し、様々な微生物により分解を受けます。我々は微生物におけるニトリル代謝研究を酵素・遺伝子レベルで解析を進めてきましたが、今回は特に、放線菌Rhodococcus属を対象とした基礎・応用研究をご紹介したいと思います。
 微生物におけるニトリルを分解する経路は上図の通りです(「ニトリルヒドラターゼ[NHase]とアミダーゼの2つの酵素がリンクした経路」と「酵素ニトリラーゼの経路」)。放線菌Rhodococcus rhodochrous J1菌は両方の経路をもっていますが、特に、本菌の酵素ニトリルヒドラターゼ(NHase)は活性が高く、現在、アクリルアミドとニコチンアミドの工業生産に使用されるに至っています。