第387回 令和5年1月20日(金)
(第263回 遺伝子機能解析部門セミナー、総合科学研究支援センター公開講演会)

演題 DNAメタバーコーディングを用いた 宍道湖 過去2000年間の環境変化解明
仲村 康秀 氏(島根⼤学学術研究院環境システム科学系エスチュアリー研究センター)
 
 神話の時代、島根県の宍道湖は海水で満たされた海(閉鎖的な内湾)であったと云われています。この点は、地質学的な研究でも裏付けられておりましたが、いつどのような環境変化が起こって現在のような宍道湖になったのかについては情報が乏しい状況でした。そこで今回の研究では、環境指標として優れているプランクトン群集に着目し、様々なプランクトンを網羅的に検出できるDNAメタバーコーディングという技術を用いて、宍道湖の過去2000年間における環境変化の解明を試みました。
 DNAメタバーコーディングを用いて、宍道湖の湖底から得られた堆積物コアを分析したところ、深度約2.5 m(西暦1200–1290年頃に相当)より下部では海産のプランクトンが多く検出され、化学的な分析からもこの深度より下部では海水の影響が強い事が示唆されました。このことから、宍道湖では13世紀中に淡水化が起こり始め、比較的短期間で現在のようなほとんど淡水の湖となった可能性が示されました。