第383回 令和4年9月14日(水)

演題 微生物で原石を磨く ―微生物変換による医薬品・化粧品・食品機能性素材の創生―
神崎 浩 氏(岡山大学学術研究院 環境生命科学学域(農学系))
 
 ダイヤモンド原石を磨いて宝石にするように,低機能物質(原石)を微生物で高機能物質(生物活性物質)に変換する研究の事例を紹介する。
① 糸状菌由来の環状ジペプチドを,新規の放線菌由来酸化酵素で強力な抗ガン活性を示す新規化合物に変換できることを見いだした。現在そのアナログをアメリカ製薬ベンチャーがPhaseIII臨床試験中である。
② オリーブ葉成分をオリーブ花由来黒酵母(還元酵素)で化粧品として有効な抗酸化活性を示す化合物に変換できることを明らかにし,その生産法を確立し,それを含む化粧品を上市した。
③ 食用キノコを生産した針葉樹バイオマス菌床を素材とする発酵完全混合飼料を製造し,その給餌により乳牛飼育が可能であることを明らかにした。さらに菌床抽出物が脂肪蓄積抑制活性を示すことを明らかにし,ペット動物健康飲料の開発を行った。
④ 麹菌の固体培養では液体培養で生産されない酵素が生産されるが,穀物以外の植物を培地とした例は少ない。そこで,地域植物資源で麹菌の固体培養を行い,有用な機能性を示す素材の創生を目指している。

「微生物のチカラ」は無限で,工夫次第で埋もれていた宝物を有効活用できる可能性を秘めている。