第368回 令和元年10月7日
(第246回 遺伝子機能解析部門セミナー)

演題 ラマン分光法,近赤外分光法を用いた胚発生の代謝活性と分子構造,水構造との関係性の研究
   石垣美歌(島根大学戦略的研究推進センター 医・生物ラマンプロジェクトセンター)
 
 本発表では,ラマン分光法,近赤外分光法を用いたマウス胚,メダカ胚の胚発生における代謝活性と水構造,分子構造との関係について発表する。
 マウス卵子の成熟に伴う卵内物質の変化を,ラマン分光法によって非破壊かつ非侵襲的に分析した。その結果,受精能,発生能の高い胚では,リン酸濃度が高く,かつタンパク質がリン酸化した際に見られるスペクトルパターンが検出された。またメダカ胚においては,受精1日目の胚発生が活性化した胚と,3種類の不活性化した胚(①低温で培養した卵,②液体窒素で急速冷凍した卵,③未受精卵)とを,ラマン分光法,近赤外分光法を用いて分析した。その結果,受精によってタンパク質の2次構造が変化し,また活性化した胚でもリン酸濃度が上昇していることを示唆する結果が得られた。そして,それらの変化に伴い,卵内の水構造が変化することも分かった。
 以上のことから,胚発生の代謝活性をタンパク質の2次構造変化とリン酸化,それに伴う水構造の変化という3つの指標により評価した結果について紹介する。