第337回 平成27年9月30日
(第218回 遺伝子機能解析部門セミナー)

演題 「合成システム生物学の展望」
   岡本正宏(九州大学大学院 農学研究院)
 
 細胞を,多数の相互作用する生体分子ネットワークからなるシステムとして捉える「システム生物学」と呼ばれる研究が行われているが,全てのネットワークが十分には理解されてはいないため,真の意味での「システム生物学」は完成していない。現状では,遺伝子,mRNA,代謝物などの大量のデータを「眺めて解析する生物学」にとどまっている.このような生体分子ネットワークを「眺めて解析する生物学」から「創って解析する・利用する生物学」を目指し,合成生物学という研究が行われている.応用面では,別の生物由来の酵素遺伝子を複数組み合わせた人工代謝経路を設計し,その生物が本来生産できない物質を大量生産させたり、人工遺伝子回路を導入するなどの試みが行われている.しかし現状では,人工遺伝子回路や人工代謝経路は小規模であり,合成生物学を展開するための技術基盤は未だ確立されていない.本講演では、システム生物学と合成生物学を統合した合成システム生物学の展望について述べる。