第283回 平成21年12月18日
(第170回 遺伝子機能解析分野セミナー)

演題 アブシジン酸シグナル伝達におけるプロテインキナーゼとプロテインホスファターゼの相互作用
   梅澤泰史(独立行政法人理化学研究所・植物科学研究センター)
 
 要旨:最近、可溶性のABA受容体(PYR/PYL/RCAR)が単離されたことで、ABAのシグナル伝達系に注目が集まっている。この受容体は、ABA依存的にプロテインホスファターゼ(PP2C)の活性を阻害する性質がある。一方、我々は早くからABAシグナル伝達系とタンパク質のリン酸化に着目しており、SnRK2プロテインキナーゼやPP2Cの解析をすすめてきた。今回、我々はSnRK2とPP2Cが様々な組み合わせで相互作用し、PP2CがSnRK2を脱リン酸化することで活性化を抑制していることを証明した。以前、我々はSnRK2がABA応答性遺伝子発現の主要な転写因子であるAREB/ABFをリン酸化することを示しており、これによってABAのシグナル伝達経路は受容体から遺伝子発現まで一本の線でつながった。本セミナーでは、これらの研究成果に加え、現在進めているSnRK2の基質探索の試み(リン酸化プロテオーム)についても簡単に紹介する。