第237回 平成17年8月4日
(第129回 遺伝子機能解析分野セミナー)

演題 RNAポリメラーゼIIとsiRNA依存的ヘテロクロマチン形成
   加藤太陽(京都大学ウイルス研究所)
 
 真核生物の染色体DNAは有糸分裂期において均等に分配される。正確な分配のためにはセントロメア中央部におけるキネトコア形成が必須であるだけでなく、セントロメアの周縁部におけるヘテロクロマチンの形成が重要である。ヘテロクロマチンは、組換えや転写が抑制された特殊なクロマチン高次構造であるだけでなく、有糸分裂後期まで姉妹染色体同士をつなぎ止めるコヒーシンの足場としての役割が指摘されている。
 近年の画期的な発見は、ヘテロクロマチンDNA配列に相同的な短いsiRNA(small interfering RNA)がRNAi(RNA interference)因子群によって生産され、それによってセントロメア周縁部ヘテロクロマチン形成が保証されるというメカニズムの発見である。我々は、分裂酵母をモデル生物とした遺伝学的スクリーニングの結果、RNAポリメラーゼIIがsiRNA生産とヘテロクロマチン形成に必要である事を見いだした。今回のセミナーでは、このRNAポリメラーゼIIの新機能について紹介したい(演者記)。