第226回 平成16年10月14日
(第118回 遺伝子機能解析分野セミナー)

演題 バイオインフォマティックス、その危うさ、そして将来への希望
   広沢 誠(かずさDNA研究所)
 
 生命科学と情報科学の境界分野であるバイオインフォマティックスは、生命科学に興味を持った情報科学の研究者により1990年頃に始められた研究分野である。計算機科学の専門家が自らのアルゴリズムを実証するための分野として生命科学が選ばれたのである。実証研究のために多くのプログラムが作成され、優れていると評価されたものはコミュニティーに蓄積されるようになった。
 やがて、1994年頃からゲノムプロジェクトが始まり、解析するべき大量のデータが生産されると、バイオインフォマティックスは膨大なデータを解析する手段として生命科学の研究者に注目されることになった。そして、現在においては、バイオインフォマティックスは生命科学の研究者にとって必須のものになりつつある。
 さて、このように発展してきたバイオインフォマティックスであるが、現在は、生命科学と情報科学の境界分野であるがゆえに弊害が出てきているように感じている。そして、その弊害は、データベースの分野において特に現れているようであるが、理解している人は少ない。
 今回は、まず、生命科学と情報科学の境界分野であるバイオインフォマティックスの流れをたどると共に、それを概観する。時間があれば、バイオインフォマティックスにおける流行のキーワードである隠れマルコフモデルについて触れる。そして、上で述べたバイオインフォマティックスに潜んでいる弊害について述べ、弊害への対処について述べる。最後に、新たに見えてきた可能性、バイオインフォマティックスを通した生命科学の教育について触れる。(演者記)