第194回 平成14年7月12日
(第86回 遺伝子実験施設セミナー)

演題 イソプレノイド生合成におけるプレニル鎖延長酵素の分子解析
   古山種俊(東北大学多元物質科学研究所)
 
 天然に23,000種以上とも言われる著しい構造多様性を持ち、様々な生理活性を示す化合物群、イソプレノイド化合物の生合成において最も基本的な過程である、イソプレノイドの炭素骨格形成反応は炭素数5のイソプレン単位を直列に鎖延長させるプレニル二リン酸合成酵素(プレニルトランスフェラーゼ)によって触媒される。これらのプレニル鎖延長酵素は「活性イソプレン単位」と呼ばれるイソペンテニル二リン酸〔IPP〕が縮合するたびに形成される二重結合がトランスになるか、シスになるかによって、それぞれE型-およびZ型プレニル鎖延長酵素に大別されるが、さらにプレニル鎖延長反応が何回繰り返されて停止するか、すなわち、反応生成物のプレニル鎖長に対応して各種のプレニルトランスフェラーゼが存在する。
 われわれは主として細菌から各種のプレニルトランスフェラーゼ遺伝子のクローニングを行い、その構造と触媒機構の相関を追究して来たが、トランス型プレニルトランスフェラーゼとシス型プレニルトランスフェラーゼは独立して進化した遺伝子ファミリーであり、一次構造ばかりでなく、三次構造まで、全く異なるタンパク質群であることを明らかにした。
 これらのプレニル鎖延長酵素の構造と触媒機構に関する分子レベルでの解析研究によって得られた成果を概説したい。