第176回 平成12年11月28日
(第69回 遺伝子実験施設セミナー)

演題 植物種子形成の遺伝学的解析
   鈴木雅晴(Horticultural Sciences Department,University of Florida)
 
 すべての生物にとって子孫を残すことは重大な使命である。高等植物では種子形成という形でその使命を果たしていると言える。種子は再び次世代の個体形成に好ましい環境が調うまで休眠という形でその生活環を一時的に休止させることができる。さらに種子が人間を含めたいくつかの動物にとっては重要な食物であることから、種子形成の仕組みを明らかにすることは生物学的および農学的に意義深い。
 植物の種子を見ると、その形や色など種類によって様々である。さらに種子を形成する胚乳と胚の形や、それら組織の絶対的および相対的な大きさも植物によってまちまちである。トウモロコシやイネやムギといった主要穀物の種子は、その多くの部分を占める胚乳と、それと比べて小さい胚によって形成される。それとは対照にアラビドプシスやエンドウでは胚が種子の大部分の容積を占めている。種子形成の仕組み、および植物間でのその仕組みの違いの解明を目指して、私は現在までにトウモロコシの種子形態異常を示す変異株をいくつか単離した。本セミナーではそれらの変異株を紹介し、種子形成の仕組みを遺伝学的に考察すると共に、変異遺伝子クローニングへ向けての具体的な戦略を紹介したい。(演者記)