D-アミノ酸は細胞壁ペプチドグリカンの構成成分として真正細菌の生育に必須である。そのため、細菌に特有なD-アミノ酸代謝関連酵素は、選択性の高い抗菌剤開発のターゲットと考えられ、その構造機能相関に関する研究が行われてきた。本講演では、細菌のD-アラニン生合成に関わるアラニンラセマーゼの反応機構と、研究の過程で明らかとなったピリドキサル5'-リン酸酵素の分子進化について述べる。また、近年、遊離D-セリンが哺乳動物の脳のNMDAレセプターのアゴニストとして働くなど、高等動物におけるD-アミノ酸の役割が知られるようになってきた。本講演では、新たな展開を見せているD-アミノ酸研究の現状も紹介したい。(演者記)
吉村先生は、1995年度農芸化学奨励賞を受賞されました。最新のホットな話題も含めてご講演いただきます。