第130回 平成9年2月7日
(第26回 遺伝子実験施設セミナー)

演題 DNA複製と突然変異
   秋山昌広(奈良先端大学院大学)
 
 DNAポリメラーゼによりDNAの新生鎖が鋳型鎖を基にして合成されるとき、一定の割合で異常な塩基対合(ミスマッチ)が複製エラーとして生じる。その異常を放置すれば生物にとって突然変異となるので、生物は修復機構によってミスマッチを取り除き、突然変異の発生率を10-10程度に低く押さえている。細胞の中で実際にどの様な複製エラーが生じているのかは興味深い問題であるが、細胞レベルでは多様な修復機構が働くので、10-10程度の希な突然変異を調べてもそれは複製エラーの実体を正確に反映していない。そこで、修復機構の関与を排除し、試験管内で複製したDNAに生じる突然変異を直接調べるため、大腸菌の染色体開始配列oriC複製系を用いて突然変異検出系を構築した。今回は、oriC複製系を参照しながらDNA複製機構の概略を説明し、この系を用いて同定された突然変異の結果から複製エラーについて考察したい(演者記)。

 秋山博士はノーベル賞受賞者のコーンバーグ博士(スタンフォード大)とスティルマン博士(現コールドスプリングハーバー研究所長-ワトソンの後継者)の分子生物学における超一流研究者のもとで研鑽を積まれて帰国された人物です。