第120回 平成8年6月11日

演題 アミノ酸輸液と成分栄養剤による医療の進歩
   弓狩康三(森下製薬(株)前社長、元大阪大学医学部)
 
 1956年、日本でアミノ酸輸液が医療の分野で実用化された。これは世界的にも初めてのことであり、以後全世界に普及し、この40年間に医療技術として急速な進歩を遂げた。当初、アミノ酸輸液は手術の前後等で充分な栄養をとることができない患者の静脈内にアミノ酸を投与して栄養を補給するものであったが、その後、糖質、電解質などを加えた高カロリー輸液が開発され食事が全く出来ない場合でも生命を維持することが出来るようになった。今では、高カロリー輸液により大きな外科手術の成功率は著しく高くなったことが明らかにされている。
 講師の弓狩医博は大阪大学医学部、ニューヨーク大学医学部、インディアナ大学医学部で薬理学、栄養学、生化学などを研鑽され、長年にわたって病態別アミノ酸輸液、経口栄養剤などの臨床栄養から免疫療法剤、抗生剤、抗ガン剤などの医薬の研究に携わって来られました。またNASAの宇宙食にも関係されるなど、アミノ酸輸液の世界的権威です。ご自身で手掛けられた研究と最近の進歩について解説していただきます。