第89回 平成14年11月21日
(第197回 細胞工学研究会講演会)
演題 味覚の分子論―食品研究の新領域を探る―
阿部啓子(東京大学大学院)
 食べ物を口に入れたときに生じる味の感覚(味覚)は、食品のおいしさを決定づける重要な因子である。 人々の食生活の輪を広げ、食文化の形成に貢献し、食品産業を発展させた基盤も味覚という感覚なのである。一方、生物学的にみると、味覚は生物が食物を受諾したり忌避したりして生命活動を適正に営むためのシグナルである。人間科学の面からも生物科学の面からも興味深い味覚の本質を、主に遺伝子工学の手法によって分子・細胞レベルで解析し、"おいしさ"の実態を理解しようとする研究が各国で開始され、最近その競争が激しさを増している。
 本講演では、筆者自身の研究の成果を中心にして、味覚の仕組みを分子レベルで解き明かす先端科学の一部を紹介し、食品研究におけるその新たな意義を探ってみたい。(演者記)
 
←戻る


©島根大学 総合科学研究支援センター 遺伝子機能解析部門 shimane-u.org