第68回 平成12年11月1日
(第175回 細胞工学研究会講演会)
演題 Ca2+シグナルによる酵母の増殖制御機構及びこれを利用する生理活性物質探索系の開発
宮川都吉(広島大学大学院先端物質科学研究科)
 私たちは、酵母をモデル生物としてCa2+シグナルの生理機能を研究している。Ca2+はカルシニューリン( Ca2+依存性プロテインホスファターゼ)およびMpk1MAPキナーゼ両経路の活性化を通し、"細胞周期エンジン"を阻害することにより、細胞周期G2/M期において増殖停止させることを見いだした。(1)
 細胞周期を制御するCa2+シグナル伝達経路の詳細を明らかにすべく、経路上に欠陥を持つ変異株を取得して解析を行っている。変異株は14遺伝子座に分類された(scz1 - scz14)。scz10変異はGSK-3ファミリープロテインキナーゼをコードする遺伝子MCK1における変異であった。Ca2+はMck1活性化を通し、細胞周期エンジン(Cdc28/Clb)活性制御のキー因子Hsl1タンパク質の分解(SCFユビキチン化経路による)を促進することで細胞周期を阻害することが明らかになった。(2)
 Ca2+シグナルは細胞増殖に阻害的に作用することが明らかになったので、このことを利用し、Ca2+シグナルの活性化により増殖阻害をおこした細胞の増殖を活性化させる物質として、Ca2+シグナル伝達の阻害物質を選抜する新規スクリーニング法を考案し、スクリーニングを実施している。(3)
(1)Nature, 392, 303-306 (1998); 実験医学17, 124 (1999).(2)投稿中.(3)Biosci. Biotechnol. Biochem., 64, 1942 (2000).(演者記)

 先日ケンブリッジの国際会議で招待講演をされるなど、世界的に御活躍です。最先端の興味深いお話を分かり易くご紹介いただきます。
 
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