第277回 遺伝子機能解析部門セミナー
(第404回 細胞工学研究会講演会)
 
演題  新規細胞壁構造Neck stripの発見とバングラデシュでの応用研究
神谷 岳洋 氏(東京大学大学院農学生命科学研究科)
 
 私は、植物が栄養を吸収し利用する仕組みを明らかにし、その知見を応用に生かす研究を進めている。現在進行中の研究の中から、本セミナーでは、これまでに進めてきた基礎、応用の二つの研究を紹介する。
 一つは、植物の分泌性トライコムと呼ばれる器官において、私達が発見・命名した「Neck strip」という新規細胞壁構造についてである。植物は様々な化合物を合成している。これまでにそれらの生産に関する様々な酵素が同定され、その経路については多くの知見がある。一方で、化合物の合成および貯蔵の場がどのようにして形成されるのか、その仕組みについて明らかになっていることは少ない。我々は、キュウリのブルームレス変異株を用いた解析により、果実表皮に存在する分泌性トライコムと呼ばれる構造に存在する新規細胞壁構造(ネックストリップと命名)が、ブルームの主成分であるシリカの合成に必要であることを明らかにした。さらに、この構造がさまざまな植物の分泌性トライコムに存在し、植物にとって普遍的な構造であることを示した (Hao et al. Nature Plants, 2024)。
 もう一つは、バングラデシュで進めている、安全で栄養価が高いイネの育種・栽培プロジェクト(SANRICE)である。現地で大きな問題となっているヒ素汚染・「隠れた飢餓」の解決を目指す社会実装型プロジェクトである。論文からでは読み取れない、現場の様子を紹介する予定である。(Project Facebook: https://x.gd/eTwSj

司会: 蜂谷 卓士(島根大学総合科学研究支援センター)

←戻る

©島根大学 総合科学研究支援センター 遺伝子機能解析部門 shimane-u.org