第242回 遺伝子機能解析部門セミナー
(第363回 細胞工学研究会講演会)
演題 「ゾウリムシで細胞内共生が成立する仕組みを解明する」
藤島 政博 氏(山口大学大学院創成科学研究科理学系学域生物学分野)


 真核細胞の進化の原動力となった細胞内共生は、現在でも繰り返して行われ、細胞が新たな構造と機能を獲得して環境適応力を増進することに貢献している。細胞内共生の成立過程の解明には、共生生物を持っていない真核生物と細菌や藻類とを混合して細胞内共生を誘導する実験系が必要であるが、自由生活の両者を混合して新たな組み合わせの細胞内共生の成立を期待するのは非現実的である。細胞内共生が可能な関係であれば、すでに共生に成功した細胞が出現しているはずである。一方、既成の細胞内共生系では、宿主や共生生物がパートナーの存在なしでは生存不能なほどに一体化が進行している場合が多く、両者を一時的に分離して、その後に混合して細胞内共生を誘導できる材料はごく稀である。それを可能にするためには、宿主側には大きなサイズの微生物を食胞内に取り込む能力が必要であり、共生生物側には宿主食胞内での消化を回避する能力、宿主にメリットを与える能力、宿主の娘細胞への分配を保証する能力、若い宿主に感染する能力等が必要である。
 単細胞生物のゾウリムシ属は大きな細胞口を持ち、長さ15μmの桿菌や直径10μmの粒子でも食胞内に取り込める。そのため、ゾウリムシ属では、これまでに60種以上の細胞内共生細菌と様々な共生藻が発見されている。我々は、真核細胞と原核細胞の細胞内共生(一次共生)の仕組みを解明する材料としてゾウリムシとその核内共生細菌ホロスポラを使い、さらに、真核細胞どうしの細胞内共生(二次共生)の仕組みを解明する材料としてミドリゾウリムシとその共生クロレラを使って、宿主から単離した共生生物をアポシンビオテイックな宿主と混合し、同調して細胞内共生を誘導する最適条件を開発した (Fujishima and Kodama, 2014)。これらの実験系を用いて初めて明らかになった細胞内共生が成立するまでに行われる現象を解説する。

Fujishima M., Kodama Y. Insights into the Paramecium-Holospora and Paramecium-Chlorella symbioses.    In, Cilia/flagella and ciliates/flagellates, (Eds) Hausmann K., Radek R., Schweizerbart Science Publishers, Stuttgart, pp. 203-227, 2014 (Jan14).  ISBN 978-3-510-65287-7

 
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