第237回 遺伝子機能解析部門セミナー
(第358回 細胞工学研究会講演会)
演題1 「アズキの多面的機能性について」
福島 道広 氏(帯広畜産大学生命・食料科学研究部門)
演題2 「胆汁酸代謝から迫る未病」
石塚 敏 氏(北海道大学大学院農学研究院)


演題1: 北海道十勝は豆類の主要生産地であり、この豆類にはレジスタントスターチが豊富に存在している。アズキ、キントキ豆、テボウ豆の煮豆は動物実験の結果より、短鎖脂肪酸の増加による腸内環境改善効果、脂質代謝関連遺伝子発現増加および血清コレステロール低下作用や胆汁酸排泄促進など脂質代謝改善に影響を及ぼすことが明らかとなった(1)。さらに、アズキのポリフェノールを用いて、慢性肝毒性試験および急性毒性試験を行った。アズキポリフェノールにより抗酸化作用および肝毒性抑制作用を有することが明らかとなった(2)。また、アズキポリフェノールを用いたin vivoおよびin vitro試験により、脂質代謝改善効果について検討し、血清の中性脂肪濃度が有意に低下させ、糞便中への脂質排泄量は有意に増加させた。膵リパーゼ活性はポリフェノールの存在下で約60%の活性阻害が認められた。さらにヒト白色脂肪細胞中の中性脂肪濃度がポリフェノールの濃度依存的に低下していた(3)。以上、アズキには腸内環境改善効果、脂質代謝改善効果、抗酸化効果および肝毒性抑制効果など多面的な機能性を有していることが確認された。

演題2: 加齢と摂取ネルギー過多により肝臓で合成される胆汁酸の内訳が変動し、その状態での胆汁酸の組成・濃度は概ね特定される。したがって、特定の胆汁酸を実験動物にごく少量与えることで、当該状態での生体の胆汁酸環境を模倣した状態を構築できる(4)。その結果、脂肪肝や消化管透過性の亢進、血中アディポネクチン濃度の低下などの不具合が生じることを見出した。これらのことは、食生活の偏りで生ずる軽微な代謝変化が非感染性疾患の発症に関与すること、当該代謝状況を模倣した食事成分の制御だけでも非感染性疾患への進展途上の状態を作り出すことができること、さらに、この実験系自体が「未病」のモデルとなり得ることを示している。現在、これらの発症メカニズムを解析しつつ、食品による介入による未病症状改善(5)機構の解明を目指している。

(1) Fukushima, et al. Lipids, 36, 129-134 (2001).
(2) Ohba, Fukushima, et al. Biosci Biotechnol Biochem, 69, 1988-1991 (2005).
(3) Kitano-Okada, Fukushima, et al. J Sci Food Agric, 92, 2644-2651 (2012).
(4) Islam KBSM, Ishizuka S et al. Gastroenterology, 141, 1773-1781 (2011).
(5) Lee Y, Ishizuka S et al. Br J Nutr, 116, 603-610 (2016).


 
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