第235回 遺伝子機能解析部門セミナー
(第356回 細胞工学研究会講演会)
(第9回 正立型共焦点レーザー蛍光顕微鏡セミナー)
(第11回 島根大学バイオイメージング研究会講演会)
演題 「植物ホウ酸輸送体の偏った局在とホウ酸センシング」
高野 順平 氏
  (大阪府立大学大学院生命環境科学研究科)


 植物は根で無機栄養素を吸収し体内を輸送して利用している。ホウ素は必須栄養素の一つであり水溶液中では主にホウ酸B(0H)3の形態で存在し、植物体では細胞壁ペクチンを架橋する役割を持つ。ホウ素の欠乏および過剰は成長を制限するため、植物は土壌中のホウ酸濃度に応じて吸収と体内輸送を厳密に制御する必要がある。
 シロイヌナズナにおいて、ホウ酸チャネルNIP5;1は根へのホウ酸吸収を促進し、ホウ酸排出型トランスポーターBOR1は地上部へのホウ酸輸送を促進する。NIP5;1とBOR1は根の様々な細胞においてそれぞれ外寄り(土壌側)と内寄り(根の中心側)の細胞膜ドメインに偏って局在する。栄養素輸送体の偏在性は次々と報告されており、吸収と中心柱への輸送を効率化するものと考えられてきたが、その生理学的重要性は証明されていなかった。演者らは最近、NIP5;1の土壌側偏在のメカニズムの一端を明らかにし、変異型NIP5;1を用いることで偏在性が根におけるホウ酸輸送に重要であることを実証した。さらに、NIP5;1の配列を利用して水チャネルを強く偏在させることにも成功した。これを栄養素利用効率の高い作物や有害物質の取り込みを抑えた作物のデザインにつなげたいと考えている。
 演者らはまた、高濃度のホウ酸に応答しBOR1が液胞に送られて分解される現象について研究を進めている。偏在性維持と液胞輸送のために使われる異なったエンドサイトーシス経路や、BOR1のユビキチン化を促すホウ酸センシングのメカニズムについて議論したい。

参考文献
1) Wang S, Yoshinari A, Shimada T, Hara-Nishimura I, Mitani-Ueno N, Ma JF, Naito S, Takano J (2017) Polar Localization of the NIP5;1 Boric Acid Channel is Maintained by Endocytosis and Facilitates Boron Transport in Arabidopsis Roots. The Plant Cell
2) Yoshinari A, Fujimoto M, Ueda T, Inada N, Naito S, Takano J (2016) DRP1-Dependent Endocytosis is Essential for Polar Localization and Boron-Induced Degradation of the Borate Transporter BOR1 in Arabidopsis thaliana. Plant Cell Physiology

 
←戻る


©島根大学 総合科学研究支援センター 遺伝子機能解析部門 shimane-u.org