第233回 遺伝子機能解析部門セミナー
(第354回 細胞工学研究会講演会)
演題 「花粉はなぜ光る? -送粉サービスの化学生態学-」
平井伸博 氏(京都大学大学院農学研究科)


 生態系サービスのうちでも、昆虫などによる受粉を意味する送粉サービスは農業生産になくてはならない自然の恵みである。しかし、送粉昆虫がどのように花を認識しているのか、言い方を変えれば、花がどのように昆虫を誘引しているのかはよくわかっていない。私たちは、花による昆虫の誘引因子として、多くの植物の花粉や葯が紫外線下において示す蛍光に注目した。蛍光の生物学的機能には2つの仮説が考えられる。1つ目は、蛍光物質が紫外線のエネルギーを蛍光に変換して放出することによって花粉中の遺伝子を保護している可能性、2つ目は、蛍光によって昆虫を視覚的に誘引し受粉を効率化している可能性である。これらを検証するために、私たちは多くの蛍光物質を同定し、それらが抗酸化活性を有するクロロゲン酸類であること、実際にミツバチがクロロゲン酸の蛍光を認識し、それに誘引されることを明らかにしてきた。花粉や葯に含まれる蛍光物質は、元々遺伝子の紫外線からの保護物質として発生したものが、後に進化の過程で昆虫が採餌行動のためのマーカーとして利用するようになったと考えられる。

 
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