第220回 遺伝子機能解析部門セミナー
(第340回 細胞工学研究会講演会)
演題  「動的代謝プロファイリング技術の開発とバイオリファイナリーへの展開」
蓮沼誠久 氏(神戸大学自然科学系先端融合研究環)


 植物や藻類等のバイオマス資源を液体燃料や汎用化学品に変換するバイオリファイナリーは、地球上の低炭素化や持続的なエネルギー供給を実現する方策として期待されるが、物質変換の要となるバイオプロセスの効率化が開発のボトルネックの一つである。細胞内代謝は複雑なネットワークを形成し,遺伝子発現レベル,タンパク質活性レベル,代謝物質レベルで厳密に制御されているため,合理的に細胞の代謝能力を向上させるためには,グローバルな代謝情報を獲得し,得られた情報に基づいて代謝改変戦略を立案することが重要である.そのための有力な手段として,マルチオミクス解析,代謝フラックス解析,代謝シミュレーション等がある.
 我々は,メタボロミクスやトランスクリプトミクス等のマルチオミクス解析技術を活用して,高等植物,出芽酵母,微細藻類やシアノバクテリア等の代謝系を網羅的に解析することで新規の代謝改変戦略を導出し,微生物の物質生産能を向上させてきた.特にメタボロミクスは,代謝ネットワーク上の中間代謝物質のプロファイリングから,物質生産能力を左右する鍵要素の抽出を可能にしてきた.一方,代謝生合成経路の律速段階を同定するためには,代謝物の蓄積量だけではなく,反応速度論的な情報も重要となる.例えば,アミノ酸や有機酸のように代謝産物であると同時に他の代謝物の基質となるような分子の場合,蓄積量の増減だけではその代謝物が関わる経路が活性化したかどうかを判断することは難しい.つまり,中間代謝物質の生合成速度を直接的に知るためには動的な代謝の流れを観測する必要がある.代謝ターンオーバーの観測は,細胞内に安定同位体標識化合物を取り込ませ,中間代謝物質の標識率の経時変化を計測することにより可能である.
 本セミナーでは,中央代謝経路の代謝中間体を網羅的に定量するメタボロミクスと,安定同位体炭素(13C)によるin vivo標識技術を組合せた「動的代謝プロファイリング技術」の開発とその応用について紹介したい.
 
←戻る


©島根大学 研究・学術情報機構 総合科学研究支援センター 遺伝子機能解析部門 shimane-u.org