第212回 遺伝子機能解析部門セミナー
(第6回 正立型共焦点レーザー蛍光顕微鏡セミナー、第8回 島根大学バイオイメージング研究会講演会、第331回 細胞工学研究会講演会)
演題 二光子ライブイメージングで解き明かす花の中の神秘
東山哲也 氏(名古屋大学トランスフォーマティブ生命分子研究所/ERATOライブホロニクス)
 花の中での受精や種子発生は、穀物生産にも直結する重要な現象である。しかし、組織内部で進行する様子を生きたまま観察することは容易ではなく、その仕組みや鍵となる分子は謎に包まれてきた。我々は、in vitro系での顕微細胞操作により、リアルタイムで植物の受精を研究することに取り組んできた。特に、花粉から伸長する花粉管という細胞が、卵組織にガイドされる花粉管ガイダンスについて、ライブイメージングと鍵分子の同定に成功してきた。しかし、細胞や分子を詳細に解析するin vitro系だけでは、花の中で達成される極めて精巧な生殖を解明することはできない。組織深部で進行する花粉管ガイダンスや受精、そして初期胚発生をリアルタイムで解析し、さらにレーザー細胞破壊のような細胞操作を自在に行うことが重要である。

 二光子顕微鏡は、フェムト秒パルスレーザーを用いて組織深部を観察する顕微鏡である。脳科学分野を中心に応用されているが、これまで他分野へは十分に展開されていない。我々は二光子顕微鏡により花の深部で進行する生殖過程の解析を進め、雌しべ内部での花粉管ガイダンスや、種子組織内部での胚発生をリアルタイムで捉えることに成功した。これにより、複数ある種子組織1つ1つに花粉管が1本ずつ選ばれてガイドされる仕組みや、初期胚の細胞が周囲の細胞とのコミュニケーションにより柔軟に運命転換する仕組みなどが明らかとなってきた。本セミナーでは、最新の二光子顕微鏡法について紹介するとともに、名古屋大学のライブイメージングセンターの取り組みについても紹介したい。

参考文献: Hamamura et al. (2011) Curr. Biol.; Kasahara et al. (2012) Curr Biol.; Maruyama et al. (2013) Dev. Cell ; Hamamura et al. (2014) Nat. Commun.; Mizuta et al. (2015) Protoplasma ; Maruyama et al. Cell, in press

 
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