第210回 遺伝子機能解析部門セミナー
(第329回 細胞工学研究会講演会)
演題 植物をバイオリアクターとした医薬品開発の現状
-スギ花粉症治療米の開発と実用化を巡る課題-
高岩 文雄 氏(農業生物資源研究所)
 植物をバイオリアクターとして医薬品タンパク質 (抗体) を生産できることが1989年に最初に報告されたが、世界的な医薬品としては2012年にフェザー社から販売されているイスラエルProtalix社のニンジン培養細胞を用いて生産されたゴーシュ病のグルコセレブロシターゼが最初の事例である。日本では2013年にイヌ歯肉炎軽減の動物用医薬品 (インターフェロンアルファ入りイチゴ) が初めて認可された。さらに今年に入り、エボラ出血熱に対して、研究段階にあるタバコの葉をバイオリアクターにして生産された未承認のモノクローナル抗体 (Z-map) が患者に投与され、有効性が示されことが報道されて以来、植物医薬品が注目を受けるようになってきた。
 演者らは現在、スギ花粉症の根治的治療薬として、抗原特異的免疫療法の原理に基づき、スギ花粉症を起こす原因となっているスギ花粉抗原を投与した際、アナフィラキシーショックが起きないようにスギ花粉抗原タンパク質を安全な形にして、イネの種子中に蓄積させた遺伝子組換え米の開発を進めている。この米由来の医薬品開発を進めるにあたり、医薬品医療機器総合機構(PMDA)と相談しながら、前臨床試験についてはまずICHガイドラインに従い、調査する項目や試験方法等を決め、遺伝子自体の安全性やモデル動物での有効性(薬効薬理)のみならず、毒性試験、薬物動態、トコシコキネティクスを調べ、安全性を担保した。更に、治験薬として、原料、中間体や原薬と種子形態との関係、品質・規格を決め、品質を保持するための栽培管理手法の確立や原薬から医薬品の各製造工程に対して、GMPでの管理マニュアルを策定した。今後、治験に入り、コメ由来のアレルギーワクチンの実用化を進めるには、まだ克服すべき問題があることもはっきりしてきた。
 
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