第190回 平成24年5月11日
(第306回 細胞工学研究会講演会)
演題 C4植物で高発現するプラスチド局在ナトリウム依存性ピルビン酸輸送体の同定
古本強(広島大学大学院理学研究科)
 ピルビン酸は炭素数3つの化合物で、生体内の炭素代謝において中心的な役割を果たす。ミトコンドリアやプラスチドには、これを輸送する特異的輸送体が存在するであろうと考えられてきたが、これまでその分子実体は不明であった。最近、筆者らの研究グループは、C4光合成代謝のなかでもいまだに未解明だった葉緑体に局在するピルビン酸輸送体BASS2を同定することに成功した。この講演では、BASS2の単離・解析結果を紹介し、最後にその可能性について触れたいと思う。
 C4光合成におけるCO2濃縮代謝では、葉肉細胞葉緑体包膜上に明瞭なピルビン酸輸送活性が認められる。これはC3植物のそれでは認められない。同属内にC3光合成を行う種(C3植物)とC4光合成を行う種(C4植物)を含むフラベリア属植物は、種間で比較的近い遺伝的背景を共有しており、相当遺伝子同士の配列はほとんど等しい。これらの種間でのトランスクリプトーム解析によって、C4植物に高発現する遺伝子を選別した。すでに既知のC4光合成関連タンパク質をコードする遺伝子を除き、新規に高発現する遺伝子を探索し、これらの中でもBASS2、BASS4、NHD1と名付けられた遺伝子は葉緑体への局在を予想させた。同様の解析がクレオメ属の植物でもなされ、その結果と合わせて共通して高発現したBASS2とNHD1は、ピルビン酸輸送をになうタンパク質をコードすると考えられた。
 遺伝子発現解析から、明期の葉での発現を確認した。またBASS2ペプチド抗体を用いたタンパク質レベルでの解析から、このタンパク質のC4植物での高発現を確認した。免疫組織染色により、葉肉細胞葉緑体の包膜への局在を検出した。C4植物は、ピルビン酸の輸送特性から、ナトリウム依存的輸送活性を示す植物とプロトン依存的輸送活性を示す植物に大別できるが、抗体と交差を示すタンパク質はナトリウム依存性を示す植物種に広く認められた。
 次いで、大腸菌での異種発現系を用いて、BASS2を発現させた大腸菌を用意し、これらでのピルビン酸輸送活性の検出を試みた。シリコンオイル二重層による測定により短時間の取り込みを測定し、ナトリウム依存性の輸送活性を証明できた。

Furumoto T, Yamaguchi T, Ohshima-Ichie Y, Nakamura M, Iwata Y, Shimamura M, Ohnishi J, Hata S, Gowik U, Westhoff P, Brautigam A, Weber A, Izui K " Identification of a plastidial sodium-dependent pyruvate transporter." Nature, 476, 472-475 (2011)
 
←戻る


©島根大学 研究・学術情報機構 総合科学研究支援センター 遺伝子機能解析部門 shimane-u.org