第182回 平成23年2月2日
(第296回 細胞工学研究会講演会)(第6回 学生GPセミナー)
演題 植物の「おいしい」成分はどうやって作られどこに貯まるのか
矢崎一史(京都大学生存圏研究所)
 我々の生活の中では、無くてもいいけれどもあったら豊かに感じるものはたくさんあります。例えば、休憩時間のお茶やコーヒー、料理に使うスパイス、おやつのチョコレート、お風呂上がりのビール、ほっと一息の意味の「一服」を煙草と同義に話すことも少なくないかもしれません。口に入れないものでも、アロマテラピーのように生活の中に取り入れられる「香り」、口紅に代表される化粧品。因みにこれらは、全て植物が原料であり、植物組織そのものかその抽出物なのですが、それを人間が「おいしい」として生活を豊かにするために、長い歴史の中で習慣として取り入れてきた天然物といえます。では人間はこれらの「植物製品」の何を利用しているのかというと、それはコーヒーやお茶ではカフェイン(アルカロイド類)やタンニン(ポリフェノール類)、香り成分ではテルペノイド類やフェニルプロパノイド類、その他天然色素もそれぞれ特有の構造をもった植物の代謝産物であり、その生理活性や味や香りや色を楽しんでいるわけです。
 ところで、それら人に取って「おいしい」成分が、各植物種にとって決まった組織(葉とか、根とか、種子とか)に蓄積していることはあまり意識されていないのではないでしょうか。人はこうした特徴ある成分を特異的に貯める組織を収穫しては生活の中で利用していますが、それらを生産する植物にとっては各成分をそこに貯める理由があって、特異的にある組織に蓄積していると考えられます。
 我々の研究室では、天然医薬品も含めてこうした人間にとってメリットのある植物成分がどのように作られ、どうして特異的な組織に蓄積されているのかその機構を明らかにしたいと考えて研究を進めています。植物成分というと、数える人によって違いますが、ざっと20万種類もあると言われますので、すべてに共通の機構を明らかにすることは短時間には無理かと思いますが、モデル植物やモデル化合物をターゲットにして、それらがどのように作られ、どのように貯められるかを明らかにすることは可能であると考えています。それらの中には、作られた場所と全く違うところまで運ばれ貯まるような場合もあります。じっと同じ所に生えて動かない植物は、動物のような血管系を持たないために、あまり気にされることもありませんが、実は独自にこうした「長距離輸送系」を発達させてきていることが分かってきています。
 今回は、薬用成分のアルカロイドの代表であるベルベリンやタバコのニコチンなどが、組織内で作られた後、どのように貯まるべきところまで運ばれてたまるのか、そこに関与する分子機構について説明したいと思っています。また、植物の「おいしい」成分が、植物の中でどのように作られているのかに関しても、最近の我々の研究室のトピックからいくつか紹介したいと思っています。(演者記)
 
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