第162回 平成20年10月8日
(第274回 細胞工学研究会講演会)
演題 植物のプログラム細胞死に関わる転写因子の核−細胞質間移行制御機構
上中弘典(鳥取大学農学部)
 プログラム細胞死は、壊死とは異なり生物に利益をもたらす遺伝的に制御された積極的な細胞レベルでの死である。プログラム細胞死が、植物の病害抵抗性を始めとする防御応答や器官形成等に関わる事が明らかになってきているが、細胞死の誘導に直接関わる転写制御メカニズムについてはほとんど明らかになっていない。
 我々は植物のプログラム細胞死の誘導機構を明らかにするために、当初細胞死の負の制御因子として同定されたシロイヌナズナのLSD1(Lesion Simulating Disease resistance 1)の機能について注目して研究を行ってきた。その過程で、LSD1と直接相互作用する転写制御因子(AtbZIP10,LIN1,IAA8/IAA9)の核−細胞質間移行が、プログラム細胞死の誘導機構と密接に関わることを明らかにしてきた[1]。細胞質においてリテンションタンパク質として機能するLSD1タンパク質は、これらのプログラム細胞死の誘導に関わる転写制御因子の核移行を抑制することで、間接的にプログラム細胞死の転写制御を行っていると考えられる。すなわち、LSD1の細胞死の負の制御因子としての機能は、転写制御メカニズムにおけるリテンションタンパク質としての機能に由来すると示唆される。
 一方、AtbZIP10と特異的に相互作用するタンパク質として、微小管プラス端集積因子であるAtEB1(End-binding 1)を新たに同定した。これまでの研究により、AtEB1の機能がAtbZIP10の核−細胞質間移行に関わること、及び微小管脱重合阻害剤処理によりAtEB1とAtbZIP10の相互作用が促進されることを明らかにした。植物EB1の機能はこれまでほとんど明らかになっていないが、動物や酵母では微小管ダイナミクスの制御に関わることが明らかになっていることから、微小管ダイナミクスがプログラム細胞死を誘導する転写制御メカニズムに関与する可能性が示唆された。
 [1] Kaminaka et al. (2006) EMBO J., 25:4400-4411(演者記)。
 
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