第127回 平成17年6月10日
(第235回 細胞工学研究会講演会)
演題 RNAワールドテクノロジー−強力プロテアーゼに対するRNA型阻害剤(アプタマー)の創製−
菊池 洋(豊橋技術科学大学)
 生命の起原をRNAとする「RNAワールド仮説」は広く知られている。RNAが進化の末に現在に続くDNA-タンパク質ワールドを作ったと考えられている。これが本当だとすれば、RNAは、現細胞で見られる機能以外の機能もかつて持っていた可能性がある。そのような考えから、RNAの潜在能力を引き出す方法が考えられている。ランダム配列のRNA集団の中から機能性RNAを引き出す様々な方法がすでに開発されている。このような方法で釣り上げられ、ある物質に特異的結合能をもつRNA分子を「RNAアプタマー」という。ここでは、演者らが行った枯草菌のタンパク質分解酵素サチライシン(ズブチリシン)に結合能をもつRNAアプタマーの創製を紹介したい。サチライシンは、工業的にも広く利用されている非常に高活性な微生物菌体外酵素である。核酸との相互作用はないものと思われる。このような高い活性をもつ酵素を阻害するRNAアプタマーを作ることができるであろうか?そのような単純な疑問から演者らは、サチライシンに対するRNAアプタマーの創製を試み、特異性の高いRNA型阻害剤の創製に成功した。このことは、天然に存在しないサチライシン−RNA間の特異的相互作用を創製したことになり、将来的にはより高度な酵素の機能変換素子としてのアプタマーの開発が期待できる。このように自然界にはなかったRNAの機能の開発技術を「RNAワールドテクノロジー」と呼んだらどうだろうか。今回得られたアプタマーは、微生物プロテアーゼに対する初めてのRNA型阻害剤であり、サチライシンの安定化剤、プロテアーゼ活性の分子スイッチとして機能できるものと期待される。このような、単純なアプタマーの利用についても討論したい(演者記)。
 
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