第109回 平成16年2月17日
(第217回 細胞工学研究会講演会)
演題 遺伝子組換え技術を用いた環境浄化型植物の育種
木村哲哉(三重大学生物資源学部)
 化学物質で汚染された土地は持ち主の責任において浄化することが義務になり、これらの汚染物質をコストをかけずに除去する技術開発が望まれている。現在、汚染物質を土壌から除去するには、土壌を掘り起こして化学的に汚染物質を抽出する方法がとられているが、よりコストの低い方法の開発が必要である。最近、生物の力を利用して汚染物質を除去するバイオレメディエーションが注目をあびている。進化速度が速く、環境に適応して様々な代謝能力を持つ微生物の特徴を利用して、汚染物質を分解除去することが考えられているが広大な土地に寿命の短い微生物を定着させて、その機能を十分に発揮させるためには、培養条件を整える必要があり、経済的にも効率のよいものではない。そこで、微生物に代わって植物にこの機能を発現させることを企てた。植物は土壌中の栄養源を利用して、長時間にわたって光合成を進め生命活動を維持することから、ここに汚染物質分解酵素や汚染物質を無毒化する酵素の遺伝子を発現させれば、持続的に分解が進むことになる。
 具体的には、内分泌攪乱物質と考えられている塩素をもつ多環芳香族の微生物分解過程で生じるクロロベンゾエートを分解する土壌細菌から、これらの分解系遺伝子をイネやポプラなどに導入し発現させた。また、遺伝子組み換え技術を用いたファイトレメディエーション技術に欠かせない植物の根で高発現するプロモーターの開発も行った。(演者記)
 
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