第103回 平成15年9月1日
(第211回 細胞工学研究会講演会)
演題 生活習慣病の病態とその予防法
小野寺敏(昭和薬科大学)
演題 桑葉の食品機能と桑葉(養蚕産物)の利用
八並一寿(玉川大学農学部)
 がん、心臓病、脳卒中、糖尿病、歯周病等の生活習慣病は、日常の生活習慣を見直すことにより相当程度予防できる。しかし、痛みなどの自覚症状がないまま発症・進行し、結果として死亡や要介護状態につながる重篤な症状発作にいたる場合が多い。生活習慣病の患者は近年著しく増加傾向にあるにも関わらず、生活習慣病という言葉の意味を理解している者は3割にとどまるという状況(平成12年2月の総理府世論調査結果)にあり、無自覚を自覚に変え、生活習慣を見直す機会が得られるよう、生活習慣病に関する知識を普及啓発することが重要である。
 平成14年11月に実施された第2回目の糖尿病実態調査では、糖尿病が強く疑われる人が約740万人、可能性を否定できない人を含めると約1,620万人と推計され、平成9年の実態調査から約250万人増加しており、国民の健康上の深刻な問題となっている。これらの調査はヘモグロビンA1cの値を元にしているが、実際糖尿病の治療を受けている人は、糖尿病が強く疑われる人の50,6%程度である。糖尿病の怖いところは、自覚症状が無いことが多く、知らない間に合併症(神経障害、網膜症、腎症、足壊疽など)になっているケースも少なくないことである。
 今回では、糖尿病と肥満との関連も含めて、予防(東洋医学では未病を防ぐ)がいかに重要かを皆様と考えていくとともに、予防に対する機能性食品の重要性も議論していきたいと思います。

I 桑葉の機能成分
  1. DNJ:特徴的アルカロイド,自然界で唯一多量に含有。αグルコシダーゼを阻害、血糖降下作用が期待。HIVウイルスのgp120糖鎖の生合成を阻害,抗HIV作用がある。
  2. ファゴミン:DNJと類似の構造を持つアルカロイド。インスリンの分泌促進作用、唾液分泌促進作用がある。
  3. イソクエルシトリン、アストラガリンなどのフラボノイド:イソクエルシトリンは、腸内細菌のβ―グルコシダーゼの作用でケルセチンに分解され腸管より吸収。ケルセチンは、血清脂質低下作用や抗酸化作用がある。フラボノイド代謝物は、脂質代謝を改善。
  4. マルベロフランU、モラシンM:強い低血糖作用を示す。桑白皮含まれる類似化合物のマルベロフランC、F,Gは血圧降下作用を、モラシンは発癌プロモーター抑制作用、抗菌作用あり。
II ヒトに対する作用
  1. ダイエット効果: 329名を対象とした調査で、ダイエット効果を確認。
  2. 抗糖尿病効果:2型糖尿病の12例を対象として行った臨床研究で、食後高血糖およびHbA1cを抑制。
  3. 桑葉配合食品の効果:高濃度の桑茶エキスにプロポリスを配合した桑ポリスでは、糖吸収抑制作用だけでなく、プロポリスの免疫増強作用、すい臓のβ細胞保護効果、肝臓保護作用が期待できる。臨床研究の結果、血糖降下作用、肝臓機能改善作用、インスリン値では低い場合は上昇させ、高すぎる場合は減少させる調整作用がある。
 
←戻る


©島根大学 総合科学研究支援センター 遺伝子機能解析部門 shimane-u.org