第67回 平成4年11月4日(水)

演題 微生物農薬の開発 -トレハラーゼインヒビター-
   新 隆志(熊本工大工学部)
 
 バイオテクノロジーの分野で、有用物質の生産手段としての微生物の重要性が諸外国で再認されつつあり、また日本においても文部省科学研究重点領域研究として「微生物の新しい機能開発のための基盤研究」が採りあげられるに到っている。
 さて、有用微生物の基礎並びに応用研究において、微生物の探索技術は極めて重要である。この微生物探索によって自然界から見出される新しい微生物の能力を応用することで有用物質の生産がはじめて可能になる。微生物由来のHMG-CoAレダクターゼ阻害剤がコレステロール低下薬として商品化された例を挙げるまでもなく、微生物の代謝産物は生理活性物質の宝庫である。このような有用物質を生産する微生物を発見するには、探索法が研究の鍵となる。従来の有用微生物探索は、個々の研究者らが、彼らの経験と創意工夫を凝らして考案したものであって、それらと類似の探索法にしたがったのでは新しいタイプの有用微生物を獲ることはほとんど困難である。
 ところで、演者等の研究グループは有用酵素、生理活性物質などを微生物に求めて探索活動をっすめ、幾つかの研究成果を挙げてきているが、今回は、微生物農薬の開発を最終目標に進めているトレハラーゼインヒビターの研究について紹介したい。
  「微生物の多様性」というキーワードに最近違和感を感じなくなったが、この多様性の意味するものに「微生物の持つ機能は無限である」を付け加えることが出来ると思っている。応用微生物学の大先達、坂口謹一郎先生は「微生物に恃みて、叶わざるはなし」と云われています。自然界には人類に未だ顔を見せていない、素晴らしい働きを持った微生物がごまんと出番を待っています。どうやったら、素晴らしい微生物を発見できるのでしょうか?...