第55回 平成3年9月27日(金)

生物資源の機能性開発
演題 「動脈硬化を治す薬の話」
   辻田代史雄(三共製薬発酵研究所長)

演題 「食品は発ガン防止に機能しているか」
   小清水弘一(京都大学農学部)

演題 「植物と虫たち ーこの不思議な関係ー」
   深海 浩(京都大学農学部)
 
 地球の温暖化、オゾン層の破壊、酸性雨、海洋汚染等、地球環境問題が深刻となってきています。これら諸問題の解決をめあして、生物の持つ優れた様々な機能を、最大限に利用、開発そして強化し、それを総合的、複合的に活用しようとする研究がすすんでいます。
  9月28日29日の両日、島根大学において開催される「日本農芸化学会西日本支部大会のシンポジウム」で講演をなさる、各専門分野の第一戦で活躍中の講師うち3名の方に、地元産業界および一般市民の方を対象として、「生物資源の機能性開発」という共通テーマのもと、それぞれの専門の立場から分かりやすい講演をいただきます。

1.人間の全ての血管は、成長と共に老化が起き始めコレステロールなどが蓄積して程度の差はあれ動脈硬化が進むとされています。あらゆる人にとって動脈硬化という症状から避けられないとしたら、それを防ぐことは大変重要な問題となります。そのための優れた医薬品の開発が強く期待されるわけですが、その動脈硬化を治す薬についての面白いお話を興味深く分かりやすくお話いただきます。

2.私たちの回りには、発ガン物質が沢山あるだけでなく、それぞれ単独では発ガン作用がなくても体内で副反応が起これば、強力な発ガン誘発物質に代わる成分が多く存在します。例えば野菜、漬物などに含まれる硝酸は体内で容易に還元されて亜硝酸イオンとなり、食品を焼いたときに生成するアミノ酸の誘導体第2級アミンと反応して,強力な発ガン物質ニトロソアミンが生成します。しかし、食品中の成分にはこれらの発ガン物質による細胞の癌化を防ぐ作用がある事があきらかになりつつあります。癌にならないために食品はどんな作用をしているのでしょうか。たくさんの天然成分から抗がん作用物質が発見されつつありますが、それらの成分とその抗癌作用の働きについて分かりやすく紹介していただきます。

3.地球上の全ての生物は、相互に何らかの関係を維持して生活していますが、その中で最も興味深いのが植物と虫たちの関係といえましょう。虫たちによる花粉の受粉、種子の伝搬などを考えますと、虫なしの植物の世界、あるいは植物なしの虫の世界など全く考えられません。しかし、その関係は意外に深いベールに包まれまだ分からないことが多いのです。とても不思議な、神秘とも言える両者の関係を珍しいエピソードで易しくご紹介いただきます。