第366回 平成31年2月28日
(第244回 遺伝子機能解析部門セミナー)

演題 亜鉛欠乏した植物の根において機能するDefensin-like family proteinの解析
   深尾陽一朗(立命館大学生命科学部)
 
 亜鉛は植物にとって必須の微量元素である。このため、亜鉛欠乏した植物では、葉の黄化や根の伸長抑制などの生育阻害が見られる。我々は、亜鉛欠乏したシロイヌナズナの根において応答する遺伝子群あるいはタンパク質群を調べるために、マイクロアレイ解析と定量的なプロテオーム解析(iTRAQ解析)を実施した。この結果、プロテオーム解析からは、亜鉛輸送体に加えて3種類のDefensin-like family proteinが亜鉛欠乏に応答して上昇するタンパク質として同定された(Inaba et al., 2015)。Defensin-like family proteinは、N末端にシグナルペプチドを有しており、成熟型は50アミノ酸程度であることから、分泌して機能するペプチドであると推定されるが、機能は全く知られてない。そこで我々は、変異体および過剰発現体を用いた解析を行ったが、亜鉛欠乏条件など複数の生育条件下において明確な表現型を示さなかった。そこで、pATsi (Paralogs and Singleton Genes from Arabidopsis thaliana)によりパラログ解析を実施したところ、7種類のDefensin-like family proteinがファミリーを形成していることが示された。このうちの一種類は、マイクロアレイ解析において亜鉛欠乏特異的に上昇するDefensin-like family proteinであり、プロテオーム解析で同定されたDefensin-like family proteinと機能的に相補し合っていることが予想された。そこで、これらの二重変異体を作成したところ、野生型と比較して根の長さが伸長することが示された。本セミナーでは、亜鉛欠乏時したシロイヌナズナの根において機能するDefensin-like family proteinを発見した経緯と、これまで行った機能解析の結果を報告する。

参考:Inaba et al., Plant J., 2015, 84 (2), 323-334.