Nudix hydrolase(NUDX)は、ヌクレオシド2二リン酸類縁体に対して加水分解活性を持つタンパク質ファミリーの総称であり、ウイルスからヒトに至る300種以上の生物に、2500を超える遺伝子が存在する。NUDXの基質には、突然変異の原因となる酸化ヌクレオチドに加え、NAD(P)H、FAD、CoAなどの補酵素、およびADP-リボースを含む糖ヌクレオチドなど、多様な生体分子が含まれる。これらは生体毒性分子だけでなく、シグナル分子、還元力の供与体、代謝中間体や補酵素など、生体にとって重要な分子であるが、本酵素ファミリーの生理機能についてはほとんど推測の域を出ていなかった。しかし近年、植物NUDXの研究を通して、細胞内でのNUDXによる種々の生体分子の分解が、環境ストレス下での細胞死誘導や防御機構の発動など、多様な細胞応答と深く関連していることが明らかになってきた。本発表では、これまでに植物の中で最も研究が進んでいるシロイヌナズナのNUDX(AtNUDX)の生理機能について紹介する。