第314回 平成25年2月18日
(第198回 遺伝子機能解析分野セミナー)

演題 無重力や寝たきりによる筋萎縮のメカニズムとその治療法の開発
 二川 健(徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部生体栄養学分野)
 
 寝たきり患者や宇宙飛行士にとって、運動器の萎縮は深刻な問題であり,そのメカニズムの解明と治療法の開発は急務である。講演者は、これまで二度の宇宙実験により、ユビキチンリガーゼCbl-bは、筋肉の成長に重要な役割を担っているIGF-1(insulin-likegrowth factor-1)シグナルの細胞内シグナル分子であるIRS-1(insulin receptorsubstrate-1)の分解を誘導する、筋萎縮の原因遺伝子の一つであることを明らかにしてきた(FASEB J 2001, FASEB J 2004, J Bone Miner Res 2006, Mol Cell Biol 2009)。つまり、unloading(無負荷環境)により発現が上昇したCbl-bによってIRS-1の分解が促進し、IGF-1シグナルは下流まで伝わることができず、筋萎縮が誘導されるとした。以上の筋萎縮メカニズムをもとに講演者は、島根大学・赤間研究室と共同で筋蛋白質代謝を改善しうる新しい機能性食材や薬剤について開発を進めている。本講演ではunloadingによる筋萎縮のメカニズムとその治療法について、皆様と議論したい。 (演者記)