第255回 平成19年3月2日
(第147回 遺伝子機能解析分野セミナー)

演題 T-box転写因子Ombによるシグナル・フィードバックと高次形態形成
   安達 卓(神戸大学大学院)
 
 多細胞動物の組織・器官を形作る初期の段階には、様々な細胞外物質が未分化細胞の分化方向を決める。このような分子の中でも特に、限られた領域で産出されてそこから分泌拡散し、濃度勾配を作ることによって距離依存的に各細胞へ異なった位置情報をもたらすものは、モルフォゲンと総称される。モルフォゲンシグナルが異常になると、標的細胞の分化運命の異常だけでなく、細胞増殖、細胞形態、細胞死など、様々な高次生命現象に効果が現れることが知られるが、これらは位置情報の変化だけでは説明できない。従ってモルフォゲンは別のシグナル分子の機能と関わることによって様々な2次的効果を発生させたり抑制したりしている、と仮定できる。今回はショウジョウバエを用いた研究で、あるモルフォゲン(Hedgehog)が過剰に作用して異常な上皮形態が生じてしまうことが、そのモルフォゲンが誘導する別のモルフォゲン(Dpp)からネガティブフィードバックされることにより抑制されて、正常形態発生を保証しているという仕組みについて報告する。(演者記)