第137回 平成9年6月19日
(第32回 遺伝子実験施設セミナー)

演題1 トランスジェニックマウスを使った細胞接着分子E-セレクチンの機能の解析
    荒木正健(熊本大学遺伝子実験施設)

演題2 Cre/loxシステムを用いたマウスでのゲノムエンジニアリング     荒木喜美(熊本大学医学部)
 
 E-セレクチンは、サイトカインで刺激された血管内皮細胞上に発現される接着分子であり、好中球、単球及び一部のT cellと結合する。我々はE-セレクチンの生体内での機能を解析するため、全ての組織で膜型E-セレクチンを発現するTgNESと、肝臓で可溶性E-セレクチンを発現するTgNEsolの、2種類のトランスジェニックマウスを作成した。その結果、生体内での好中球活性化及び癌細胞転移等におけるE-セレクチンの重要な役割を示唆するデータが得られたので紹介する。

 Cre/loxシステムは、バクテリオファージP1由来の組換えシステムで、Creはlox配列と呼ばれる34塩基対の配列を認識して組換えを起こす酵素である。その反応は非常に効率よく起こり、また、何のco-factorも必要としないので、酵母からマウスまで幅広く応用が可能である。このCre/loxシステムをトランスジェニックマウスやノックアウトマウスの系に用いることにより、より複雑な遺伝子操作が可能となった。最近注目を集めているこのシステムの成果と可能性について紹介したい。