第113回 平成8年1月26日
(第13回 遺伝子実験施設セミナー)

演題 ABCスーパーファミリーの分子機構
   植田和光(京都大学農学部)
 
 癌細胞は抗ガン剤を多用すると耐性を獲得し、癌細胞に抗ガン剤が効かなくなっていく現象があります。その原因がABCスーパーファミリーに属するP糖蛋白質であります。ABCスーパーファミリーは共通したATP結合領域を持つトランスポーターの一群であり、P糖蛋白質の他、ヒトではその異常が重篤な遺伝病嚢胞性繊維症をひきおこすCl-チャネルのCFTRなどが含まれています。P糖蛋白質は、ATP加水分解のエネルギーを用いて抗ガン剤を細胞内から細胞外へ排出することによって癌細胞を多剤耐性にしています。本講演ではP糖蛋白質の分子機構を中心に、ABCスーパーファミリーについて概説していただきます。