第110回 平成7年12月12日
(第11回 遺伝子実験施設セミナー)

演題 高等植物の細胞壁酵素の機能と遺伝子発現-有用酵素アスコルビン酸酸化酵素とキチナーゼに着目して-
   江坂宗春(広島大学生物生産学部)
 
 アスコルビン酸酸化酵素は高等植物に特有な酵素で、アスコルビン酸を酸化してデヒドロアスコルビン酸を生成する反応を触媒する。本酵素は銅を有する酵素として、その構造と触媒機能について注目されている。また、本酵素はアスコルビン酸を特異的に酸化するのでアスコルビン酸の定量などに用いられており、植物の酵素では数少ない有用酵素の一つである。しかし、細胞壁に局在する本酵素の生理的機能については不明である。今回はアスコルビン酸酸化酵素が植物の生長に関与しているのではないかという知見と遺伝子発現そしてDNA結合タンパク質に関する研究について紹介したい。
 一方、高等植物のキチナーゼはその基質であるキチンが植物体に存在しないと言われていることから、カビなどの微生物の感染から植物体を守る防御酵素の一つと考えられている。今回は、キチナーゼの分泌に関する知見とその遺伝子発現の様式についても話題提供したい。